WeightedBatchPreprocessing (WBPP)
WeightedBatchPreprocessing(WBPP)は、ライト・ダーク・フラット・バイアスから、較正・位置合わせ・スタック済みのマスターライトを作るスクリプトである。データはフィルター、露出時間、ビニングごとに自動でグループ分けされる。
目的
| 用途 | 結果 |
|---|---|
| フレームを較正してスタックする | フィルターごとのマスターライト、OSC なら 1 枚のカラーマスター |
| 複数フィルターの位置を揃える | すべてのマスターを同じ基準画像に位置合わせ |
| 天体位置解析の結果を作る | 何千もの恒星を Gaia のスペクトルと比べて、広帯域・OSC 画像の色を較正する。客観的で再現可能。背景のニュートラル化も含む。 基礎を開く →、空の参照マップ(MARS)を使ってグラデーションを補正するので、本物の大きな信号とグラデーションを見分けられる。広帯域データ用で、事前に SPFC が必要。 基礎を開く →、注記の前提 |
なぜ個別の処理ではなく WBPP を使うのか
スクリプトはすべての段階を一貫した設定でつなぐ。手作業の途中工程によるミスがなくなり、処理が再現可能になる。
原理
| 段階 | 効果 |
|---|---|
| 較正 | バイアス・ダーク・フラットでオフセット、暗電流、ホットピクセル、周辺減光、ゴミを取り除く |
| コスメティック補正 | 残ったホット・コールドピクセルを、位置合わせで筋状に伸ばされる前に取り除く |
| ディベイヤー(OSC のみ) | ベイヤー配列からカラー画像を再構成する |
| 重み付け | シーイングと透明度のよいフレームを優先する |
| 位置合わせ | すべての画像を基準画像に画素単位で合わせる |
| Local Normalization | フレーム間の明るさやグラデーションの違いをならす |
| リジェクションつきスタック | 画像を平均し、人工衛星や飛行機などの外れ値を取り除く |
パラメーター
WBPP 3.1.x のタブ順に記す。バージョンによって項目の位置が異なることがある。
Bias / Darks / Flats / Lights タブ
+Bias、+Darks、+Flats、+Lights、+Directory でファイルを読み込む。
| タブ | 確認 | 理由 |
|---|---|---|
| Bias | マスターバイアスまたは各フレームが認識されている | フラットは短すぎて専用のダークがないため、バイアスで較正する |
| Darks | ライトに合った露出、同じ温度 | 合ったダークでなければ暗電流とホットピクセルを正しく取れない |
| Flats | フィルターごとに 1 グループ、フィルターのキーワードが正しい | 周辺減光やゴミはフィルターごとに違う |
| Lights | グループ分け、露出、フィルターが妥当 | グループ分けを誤ると較正も誤る |
Calibration タブ
フラットのグループ: バイアス(またはダークフラット)が割り当てられていること。
ライトのグループ:
| 項目 | 設定 | 理由 |
|---|---|---|
| Calibration Settings | ダーク Auto。露出と温度が合っていれば Optimize Master Dark はオフ | ダークの最適化はダークを拡大縮小し、CMOS センサーでは不具合を生むことがある |
| Output Pedestal Settings | automatic | ダーク減算後の負の値やクリップを防ぐ |
| Cosmetic Correction | 有効(ホット・コールドの自動検出) | 原理を参照 |
| CFA Settings | モノクロ:オフ。OSC:較正、コスメティック補正、重み付け、位置合わせ、正規化、スタックを一連の再現可能な処理にまとめる。1 枚ずつのフレームから、位置の揃ったマスターライトを作る。 基礎を開く →を参照 |
確認: ライトの表でダーク ✓ とフラット ✓、フラットのフィルターが合っていること。
Post-Calibration タブ
| 項目 | 設定 | 理由 |
|---|---|---|
| Subframe Weighting | PSF Signal Weight | 恒星の S/N で重み付けする |
| Image Registration | 既定値。複数フィルターなら共通の基準画像を 1 枚 | すべてのマスターが画素単位で重ならないと色ずれが出る |
| Astrometric Solution | 有効 | SPCC、MGC、注記の前提 |
| Local Normalization | 有効 | リジェクションと重み付けがよくなる |
| Image Integration | リジェクションは Generalized Extreme Studentized Deviate(フィルターあたり 50 枚程度以上) | 枚数が多い場合に頑健な外れ値検出 |
| Drizzle | アンダーサンプリング(約 2″/px 超)の場合のみ任意で 2×、その場合は全フィルターで同じに | ドリズルは幾何を変えるので、縮尺の混在した画像は合成できない |
| Autocrop | 有効 | グラデーション補正や統計の妨げになる位置合わせの縁を切り取る |
Pipeline タブと右側のパネル
- Pipeline: 必要な処理がすべて有効か確認する。
- Registration Reference Image: モード auto、または最も強いフィルターのいちばんよいフレームを手動で。これがすべてのマスターの幾何を決める。
- Global Options: Generate rejection maps を有効に、Preserve white balance は既定(オフ)のまま。
- Output Directory: プロジェクトのフォルダー。Run で開始。
代表的な使い方
複数フィルターのモノクロカメラ
フィルターごとにフラットとライトのグループ、CFA はオフ、位置合わせの基準画像は共通。結果:フィルターごとに位置の揃ったマスター(例 L、R、G、B、Ha や Ha、OIII、SII)。
カラーカメラ(OSC)
| グループ | 設定 |
|---|---|
| フラット | CFA images を有効 → Apply to all flat frames |
| ライト | CFA images を有効、Mosaic pattern Auto、ディベイヤー方式 VNG → Apply to all light frames |
| ドリズル(任意) | Bayer Drizzle 1×。2× はアンダーサンプリングの場合のみ |
- VNG を使う理由: エッジに応じて補間するので、フル解像度ではバイリニアや SuperPixel より恒星の色の偽像が少ない。
- Bayer Drizzle を使う理由: 足りない色の値を補間せず、各フレームから色チャンネルを直接再構成する。恒星がシャープになり、カラーノイズが減る。ディザリングした多数のフレームが必要。
- スタック直後の画像は緑がかって見えることがある。これは想定どおりで、何千もの恒星を Gaia のスペクトルと比べて、広帯域・OSC 画像の色を較正する。客観的で再現可能。背景のニュートラル化も含む。 基礎を開く → で補正される。古い WBPP には Separate CFA flat scaling factors があったが、3.x では独立したチェックボックスではない。
- 確認:ライトの表でダーク ✓、フラット ✓、フラットの表でバイアス ✓、CFA Images Yes。結果:1 枚のカラーマスター。
リジェクションマップを読む
リジェクションマップは、大きいほうのマスターライト(「autocrop」なし)に追加の画像(rejection_low、rejection_high、場合により slope)として入っており、開くと複数のウィンドウが表示される。
rejection_highの細い線:取り除かれた人工衛星。- マスターにあるのにリジェクションマップにない偽像は、すべてのフレームに写っていたもの(画角外の恒星の迷光など)。リジェクションでは取れない → トリミングする(DynamicCrop)。
よい結果の見分け方
よくある失敗
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| マスターにゴミの輪、周辺減光 | フラットがない、またはフィルター違い | フラットの割り当てを確認 |
| ホットピクセルの筋 | コスメティック補正がオフ、ダークが合っていない | コスメティック補正を有効に、合ったダークを |
| 合成時の色ずれ | フィルターごとに別の基準画像で位置合わせした | 共通の基準画像を 1 枚 |
| 緑かぶり(OSC) | ディベイヤー後としては想定どおり | SPCC で色較正 |
| マスターに筋があるがリジェクションマップにはない | すべてのフレームに迷光 | グラデーション補正の前にトリミング |
| マスター同士を合成できない | 1 つのフィルターだけドリズル | 全フィルターで同じドリズル |
向いている場面・向いていない場面
| 向いている | 別のツールがよい |
|---|---|
| モノクロ・OSC データの標準的な前処理 | 縁や迷光の除去 → DynamicCrop(その後に) |
| 複数夜にまたがる再現可能な処理 | マスターのグラデーション → 大きな明るさや色のグラデーション(光害、月、周辺減光の残り)をモデル化して差し引く。構造は保護マスクでモデルから守られる。 基礎を開く →(その後に) |
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